はるとの本棚
感想

本屋大賞受賞作ということで、期待値が高めに設定された状態での読み始めでしたが、その期待を見事に裏切らない素晴らしい作品でした。 エンジニアという職業柄、論理的思考に偏りがちな自分にとって、この物語の「他者への向き合い方」というテーマは非常に新鮮でした。料理という行為を通じて愛情を伝えるという、シンプルながら深い描写が心に残ります。 弟の急死という重い喪失から始まる物語は、安直な感動ポルノに走らず、丁寧に登場人物たちの感情変化を追っていきます。薫子とせつなの関係性の変化、家事代行という日常的な営みの中に見出される人生の意味——慎重に物を選ぶ性分の自分も、この作品ならば自信を持って勧められます。 終盤の展開では、予想外の展開がありながらも、不自然さを感じさせません。むしろ、そうであるべき必然性を感じました。静かで穏やかなのに、確かな力強さを持つ物語。読んだ後、ゆっくり温かさが体に染み込む、そんな体験ができました。

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