洋子の本棚
ユーチューバー

ユーチューバー

村上龍 幻冬舎 2025年6月12日

感想

矢崎健介という人物が何者なのか、どのような人生を歩んできたのか——その謎を追うような構成になっています。ユーチューブという現代的な媒体を通じて、70歳の男性が過去の恋愛について語るという設定は、確かに興味深い着眼点だと思いました。 ただ、読み進めていて感じたのは、この作品が何を問いかけたいのかが少しぼやけているということです。連作小説という形式で複数の女性との関係が描かれるのですが、それぞれのエピソードが点在しているような印象を受けてしまいました。矢崎という人物の「自由」とは何か、人生とは何かという大きなテーマが提示されながらも、その答えへの道のりが明確ではないような。 文章そのものは読みやすく、人間関係の機微も丁寧に描写されています。けれども、全体を通すと、いくつかのエピソードを繋ぎ合わせた作品という感覚は拭えません。人文書を多く読む身としては、もう少し深い思索や問題提起の力強さを期待していたところもあります。悪い本ではないのですが、心に残るような何かを、私は見つけられませんでした。

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