チョコの本棚
感想

直木賞受賞作『サラバ!』から5年、待望の長編とあれば期待値も自ずと高まるというもの。実際に手に取った際、著者の円熟した筆致と複数の人物を同時に描く構成に引き込まれました。 ただ、読み終えてみると、何か物足りなさが残ってしまったのが正直なところです。幼馴染みという過去の繋がり、SNSという現代的な距離感、そしてバンクーバーという地理的な分断——これらの要素は確かに興味深いのですが、それぞれが十分に融合しきれていないような印象を受けました。 登場人物たちの心理描写は丁寧ですし、時間軸の使い方も工夫されています。ただ管理職として日々判断を迫られる立場から見ると、物語全体としての明確なテーマや到達点が曖昧に感じられてしまいました。「絶望と勇気」というコピーは惹かれるのですが、その葛藤がもっと鮮烈に立ち上がってくれば、この作品はさらに力強いものになったはずです。 決して悪い作品ではありません。むしろ落ち着いて読める良質な長編です。ただ、同著者の過去作と比較してしまうと、どうしても一段階下の評価になってしまいます。

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