石井の本棚
超高級老人ホームに入ってみた

超高級老人ホームに入ってみた

平野 悠 集英社 2026年7月17日

感想

入居金6000万円の超高級老人ホームという設定だけで、すでに面白さが約束されている本だと感じていました。実際に読んでみると、期待を裏切らない良質なルポルタージュでした。 著者の視点が実に冷徹で、豪華な施設や充実したサービスの裏側にある人間関係の機微や、富裕層特有の葛藤を丹念に描き出しています。高層階の海の景色が美しいはずなのに、そこに孤独が付きまとうという矛盾。これは単なる老人ホームの話ではなく、人間にとって本当の「豊かさ」とは何かを問いかけているように思えました。 技術系の仕事をしている身からすると、データや事実を積み重ねていくアプローチが心地よく感じられます。著者は誇張や感情的な記述を控えめに、むしろ淡々とした筆致で状況を伝えることで、より説得力を持たせている。新書というフォーマットも活きていて、読み始めたら一気に読み終わってしまいました。 わずか2年で退去に至った経緯についても、単純な不満ではなく、より深い人間的な理由が見え隠れしていて興味深い。老後問題への一つの視点として、多くの人に読まれるべき作品だと感じます。

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