塀の中の美容室

塀の中の美容室

桜井美奈

出版社:双葉社 出版年月日:2018/09/13

双葉社 | 2018/09/13

4.50
本棚登録:6人

みんなの感想

感想

仕事に追われて人間関係が二の次になっていく——そんな現代人の痛みが、最初の数ページで突き刺さってくる。主人公・志穂のメール文面「ゴメン。今日も仕事でダメになった」という表現の上手さだけで、この作者の観察眼の確かさが伝わります。 刑務所という一見遠い世界を舞台にしながら、実は私たちの日常の問題へ静かに向き合う作品です。各話の登場人物たちが美容室に来る理由、そこで何を思い、どう変わっていくのか。連作短編という形式が活きており、一つひとつの物語が独立しながらも、全体で大きなテーマへ収束していく構成が見事。 システムエンジニアとして論理的思考に慣れた身としては、人間の心理や感情の複雑さをこのように丁寧に掬い上げることの難しさを痛感します。決してお涙頂戴にならず、むしろ静謐な中に深い洞察がある。新書や人文書で得られるような知見が、小説という形で自然に心に染みてくる——そういう良質な読書体験でした。是非多くの人に読まれるべき作品だと思います。

感想

仕事の帰りの満員電車で一気読みしてしまった。刑務所の美容室という一風変わった舞台設定に惹かれて手に取ったのだが、予想をはるかに上回る傑作だった。 番組制作会社で働く主人公の日常から始まる物語。激務に追われ、恋人とのデートもキャンセルし続ける彼女の姿は、正直なところ自分たちの世代の会社員の現実そのものだ。そんな彼女が刑務所の美容室を取材することで出会う、様々な背景を持つ人物たちの物語。 連作短編という形式が活きていて、それぞれの話が独立しながらも全体で深い余韻を残す。表面的には「受刑者と美容師」という限定的なテーマに見えるが、実は人間関係の距離感、仕事と人生のバランス、後悔と再生といった、今の自分たちが直面するテーマが静かに浮かび上がってくる。 筆者の視点の優しさに心が揺さぶられた。決して説教的ではなく、自然に考えさせられる。仕事で疲れた時、人間関係で悩んでいる時だからこそ、この本は心に沁みる。話題作として押さえておくべき一冊だ。

ブクログからブクマへ
かんたん引っ越し

読書記録や感想をそのまま移行。
数分の準備で、ブクログの本棚をブクマへ。

詳しく見る
ブクログからブクマへの引っ越しイメージ