仕事の帰りの満員電車で一気読みしてしまった。刑務所の美容室という一風変わった舞台設定に惹かれて手に取ったのだが、予想をはるかに上回る傑作だった。 番組制作会社で働く主人公の日常から始まる物語。激務に追われ、恋人とのデートもキャンセルし続ける彼女の姿は、正直なところ自分たちの世代の会社員の現実そのものだ。そんな彼女が刑務所の美容室を取材することで出会う、様々な背景を持つ人物たちの物語。 連作短編という形式が活きていて、それぞれの話が独立しながらも全体で深い余韻を残す。表面的には「受刑者と美容師」という限定的なテーマに見えるが、実は人間関係の距離感、仕事と人生のバランス、後悔と再生といった、今の自分たちが直面するテーマが静かに浮かび上がってくる。 筆者の視点の優しさに心が揺さぶられた。決して説教的ではなく、自然に考えさせられる。仕事で疲れた時、人間関係で悩んでいる時だからこそ、この本は心に沁みる。話題作として押さえておくべき一冊だ。