殺人犯はそこにいる
新潮社 | 2016/05/28
みんなの感想
調査報道というジャンルがここまで深く、読み応えのある物語になり得るかと驚かされた。群馬・栃木県境での連続失踪事件を追うノンフィクションだが、単なる事件記録ではなく、冤罪を生み出してしまった司法制度の構造的欠陥に鋭くメスを入れている点が秀逸だ。 著者の執念的な取材姿勢に引き込まれながら読むうちに、自分たちが信じていた「正義」の脆さが見えてくる。足利事件という"解決済み"の事件の背後に隠された真実への迫り方は、推理小説さながらの緊張感を保ちながらも、扱う内容の重みを決して軽くしない。複雑な事件構図も整理されていて、わかりやすいのにリアルな迫力が失われていない。 人文書や新書をよく読む身としても、このレベルの調査報道は日本ではそう多くない。制度や権力の問題を徹底的に検証した作品として、すべての市民に読む価値がある。制度設計に関わる人間にこそ読んでもらいたい一冊だ。文庫化により、より多くの人に届くことを期待したい。
足利事件という名前は聞いたことがあったが、ここまで深い闇があったのかと驚かされた。新聞やニュースでは知りえない、取材記者の執念がなければ決して表に出ることのなかった真実が詰まっている。 慎重に判断することが習慣になっている身としては、この本が示す「確定的と思われていたものの危うさ」は特に衝撃的だった。司法制度への漠然とした信頼が、いかに脆いものであるかが明確に伝わってくる。冤罪という言葉では片付けられない、人生全体を奪われた人間の苦悩。その背景にある組織的な問題。これらが淡々とした筆致で記録されているからこそ、逆に怒りが込み上げてくる。 調査報道というジャンルの重要性を改めて認識させてくれた。事実を掘り下げることの難しさ、そしてそれを世に問うことの勇気。仕事の合間に読み進めるたびに、自分の人生設計の堅さを考えさせられた。推奨される傑作であることに納得できる一冊だ。
長年ボランティア活動をしながら社会問題を学んできた私として、この本は本当に衝撃的でした。足利事件という名前は聞いたことがありましたが、その背後にこれほどの複雑な真実が隠されていたとは……。 著者の執念深い調査報道には感服します。群馬と栃木の県境で起きた連続失踪事件。一つは冤罪として片付けられ、その他は謎のままだった。そこに光を当てようとした勇気ある試みです。単なる事件記録ではなく、日本の司法制度の脆さ、捜査の限界、そして無実の人が罪に問われることの悲劇が浮き彫りになっていきます。 この年になると、正義とは何かということを改めて考えさせられます。真実がこれほど複雑で、権力機構の中に埋没してしまうことがあるのだと。それでもなお、ペンの力で光を当て続けることの大切さがここに描かれています。 文庫化されたことで、より多くの人に読まれるようになるといいと思います。民主主義社会において、市民が知るべき重要な記録です。