莉子の本棚
ルビンの壺が割れた

ルビンの壺が割れた

宿野 かほる 新潮社 2020年1月29日

感想

新聞の書評欄で見かけて、気になっていた一冊です。SNSを通じた昔の恋人との再会という設定に、現代的でありながらも、どこか切実な人間関係の物語が隠れているに違いないと直感しました。 読み始めてから、ページをめくる手が止まりませんでした。二十八年という歳月の重さ、変わってしまった自分たち、それでも心のどこかに残っている想いが、メッセージのやりとりを通じて浮かび上がってくるのです。特に素晴らしいのは、この物語が予想外の展開を見せることです。単なる昔の恋人との再会話ではなく、もっと深い何かへと変容していく過程が、本当に丁寧に描かれています。 終盤の仕掛けには正直驚きました。こんな読み方があるのかと、老いぼれた頭でも目からうろこが落ちる思いでした。最後に壺が割れるような、すべてが変わるあの瞬間まで、何度も物語を読み返したくなります。文庫本で手頃な長さなのも良かった。若い世代にも、私たちのような年配者にも、人生経験がある人ほど深く味わえる、素敵な作品だと思います。

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