りくの本棚
感想

話題になってから待ちに待った作品です。3年の執筆期間を経た『きずもの』、さすがの重厚さ。 幼馴染み同士の二つの物語が並行して進む構成が素晴らしい。松川貢と田持猛という、かつての上下関係が時間とともに逆転していく様子—それって本当にリアルですよね。SNSでつながり続けるというのも今の時代だからこその設定で、なんだか自分たちの世代の話を読んでいるような親近感があります。 バンクーバーのパートも魅力的で、地理的な距離があるのに関係性が深まっていく過程が丁寧に描かれている。「絶望と勇気が肩を組んでやってくる」という帯の言葉がぴったりで、読み進めるたびにその意味が腑に落ちてきます。 直木賞受賞作の『サラバ!』以来の長編ということで、著者の筆力の熟成を感じます。新社会人として人間関係の複雑さを実感し始めた時期に読めて良かった。時間をかけて読む価値のある一冊です。

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