死にがいを求めて生きているの

死にがいを求めて生きているの

朝井リョウ

出版社:中央公論新社 出版年月日:2022/10/21

中央公論新社 | 2022/10/21

4.50
本棚登録:2人

みんなの感想

朝井リョウの新作は、ほんとうに手放せませんでした。 平成という時代を生きた若者たちの、あの息苦しさ。「誰とも比べなくていい」と言われながら、どうしようもなく他者と比較してしまう心理。自営業で長く仕事をしていると、そういった葛藤がどれだけ人を蝕むか、痛いほどわかります。 植物状態の智也と彼を見守る雄介という一見シンプルな関係から、次々と登場人物の人生が絡み合っていく構成が素晴らしい。看護士、転校生、大学生、中年ディレクター——それぞれの「生きづらさ」が静かに、しかし確実に共鳴していく。 何度も立ち止まって考えさせられました。特に中年ディレクターのくだりは、自分たちの世代にも深く響くものがあります。時代に取り残されるということの絶望感、そしてそれでも祈り続けることの意味。 文庫本という手軽さでこれだけの深さが手に入るのは稀です。話題の本として目にしていましたが、期待以上でした。いますぐ友人にも勧めたい一冊です。

朝井リョウの手による現代人の心の闇を描いた作品です。複数の登場人物の視点から物語が紡がれていくのですが、その構成の巧みさに引き込まれました。 エンジニアとして論理的思考を重視する自分だからこそ、この作品の"歪な真実"へと至る道筋が見事だと感じます。各キャラクターの選択や行動が一見バラバラに見えながら、実は緻密に繋がっていく過程は、複雑なシステムの構造を理解する快感に似ています。 「価値のある人間なのか」という問いかけは、平成という時代を生きた若者たちだけの悩みではなく、今を生きるすべての人間に突きつけられる根源的な問題です。自分も思い当たる節がありました。 ただ、後半の展開は若干駆け足だったかなという印象も。もう少し丁寧に消化したかった部分がある。それでも、この問題提起の力強さと完成度を考えると、十分に価値のある一冊です。人文・思想的な深さを求める読者にこそ、読んでほしい作品だと思います。