朝井リョウの手による現代人の心の闇を描いた作品です。複数の登場人物の視点から物語が紡がれていくのですが、その構成の巧みさに引き込まれました。 エンジニアとして論理的思考を重視する自分だからこそ、この作品の"歪な真実"へと至る道筋が見事だと感じます。各キャラクターの選択や行動が一見バラバラに見えながら、実は緻密に繋がっていく過程は、複雑なシステムの構造を理解する快感に似ています。 「価値のある人間なのか」という問いかけは、平成という時代を生きた若者たちだけの悩みではなく、今を生きるすべての人間に突きつけられる根源的な問題です。自分も思い当たる節がありました。 ただ、後半の展開は若干駆け足だったかなという印象も。もう少し丁寧に消化したかった部分がある。それでも、この問題提起の力強さと完成度を考えると、十分に価値のある一冊です。人文・思想的な深さを求める読者にこそ、読んでほしい作品だと思います。