ぼくは勉強ができない
新潮社 | 1996/03/01
みんなの感想
久しぶりに、本当に素直で楽しい青春小説に出会った気がします。 成績が悪いという設定だけで人を判断してしまう世の中って、本当に窮屈ですよね。管理職という立場で日々部下と向き合っていると、その違和感がよく分かります。この作品の主人公・秀美くんは、勉強はできないけれど、人間として大切なものをちゃんと持っている。そういう当たり前のことが、ここまで生き生きと描かれているのが素敵なんです。 年上の桃子さんとの関係、サッカーへの情熱、家族との温かいやり取り——どれもが青春の光を放っていて、読んでいて自分も若い日の輝きを思い出させてくれました。学校という限定的な価値観に息苦しさを感じる秀美の姿が、今の教育現場や職場の息苦しさまで投影されて見えます。 仕事で疲れた時や、複雑なことを考えたくない時に、こういう元気で率直な物語は本当に心の栄養になります。細かい描写も自然で、読みやすいのに心に残る——そんなバランスの取れた一冊です。
高校生の時田秀美という少年の視点を通じて、成績と人間的価値について考えさせられた作品だ。会社員として数十年を過ごしてきた身としては、学校という閉じられた環境で勉強という単一の価値観に縛られる辛さが、今さらながらよく理解できる。 秀美が感じる「窮屈さ」は、けっして珍しいものではない。実は多くの人間が、どこかでこのような違和感を抱えている。本書の秀美は、サッカーや人付き合いといった自分が本当に大切だと思えることに正直に向き合い、その中で人間的な魅力を磨いていく。その姿勢が爽やかに描かれている点が、この小説の良さだと感じた。 母親や祖父といった理解者の存在も印象的だ。誰もが完璧である必要はなく、自分らしさを保つことの大切さが、押しつけがましくなく自然に伝わってくる。年代を重ねた読者だからこそ、こうした親世代の温かな視点の価値が骨身にしみる。 慎重に本を選ぶ私にとって、この作品は読む価値がある一冊だった。元気で前向きながらも、人間の本質を問う問いかけがある。若い世代にはもちろん、中年の私たちにも通じるメッセージがある。
この本、子どもの進路について考える機会が増えた今だからこそ、とても考えさせられました。 主人公の秀美くんは確かに成績は悪いのですが、それでも人として何か大切なものを持っている。そういう子どもっていますよね。親としても教育者としても、ついつい成績という数字に目が行ってしまいますが、この本は「それだけじゃないんだよ」と優しく語りかけてくれている気がします。 秀美が年上の女性と関係を持ったり、学校に違和感を感じたりしている様子は、一見するとどこにでもある思春期の話。でも丁寧に描かれているので、単なる問題児の話ではなく、その子なりの生き方や考え方を尊重したいという想いが伝わってくるんです。 ただ、後半の展開は個人的には少し急いでいる印象を受けました。もう少しゆっくり物語を追っていきたかった部分もあります。とはいえ、全体的には明るく前向きで、読了後は何かほっこりとした温かさが残る一冊です。思春期の子を持つ親にも、そうでない人にも是非読んでもらいたい。