君が異端だった頃

君が異端だった頃

島田 雅彦

出版社:集英社 出版年月日:2022/08/19

集英社 | 2022/08/19

5.00
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みんなの感想

読売文学賞受賞作ということで手に取ってみたが、これは見事な作品だ。著者が自らの青年期を赤裸々に綴ったこの一冊、まさに自分たちの世代が共感できる要素に満ちている。 「誰もが少年時代に呪われている」という冒頭の言葉に、ぐっと引き込まれた。3月生まれという些細なことから始まる人生の諸事情、そして小説家志望の高校時代、ロシア語漬けの大学時代へと続く人生のクロスロードが、これほど説得力を持って描かれるとは。著者の執念とユーモアが交錯する文体で綴られる「恥ずべき」過去は、実は誰の人生にもあるのではないか。 何度も芥川賞候補になりながら落選し続けた苦渋の経験も、これまでは聞きようによっては自慢話に聞こえるかもしれない。しかし本書では、その挫折の積み重ねが、いかに著者を鍛え上げたのかが丁寧に示される。58歳の今だからこそ、人生の岐路で悩み、もがき、時に空回りした自分の姿が、とても大切に見える。 久々に心が震える読書体験を得た。同世代にこそ、ぜひ読んでもらいたい一冊である。

読売文学賞受賞作と聞いて、すぐに手に取りました。期待通り、素晴らしい一冊です。 著者の人生を辿るエッセイのような構成なのですが、これが本当に引き込まれる。3月生まれの自分が「遅生まれの劣等感」とどう向き合ったか、小説家志願という夢がいかに迷走の連続だったか——そうした「異端」だった時代が、決して否定的ではなく、むしろ愛おしく描かれている点が素敵です。 公務員という安定した道を選んだ身としては、「別の人生を歩む勇気」と「それでも諦めない執念」という相反する感覚が、すごく胸に響きました。芥川賞の落選を何度も経験しながら、それでも書き続けた著者の姿勢に、人生って本当に一本道じゃないんだなって改めて感じます。 文章が美しくて、時に自虐的で、時にユーモアに満ちている。恥ずかしい過去も、失敗も、全部が今の著者を作っているんだという温かさが伝わってきます。人生の転機を迎えている人、自分の選択に迷っている人にぜひ読んでほしい。最近読んだ本の中で、一番心に残りました。