あやかし草紙 三島屋変調百物語伍之続(5)
KADOKAWA | 2020/06/12
みんなの感想
三島屋シリーズも第五弾まで来たか。いやはや、これほどまでに没入させる時代小説に出会えるとは思わなかった。 今作は「瓢箪古堂」の若旦那・勘一が語り手となり、寿命を教える不思議な冊子をめぐる物語が展開される。怪談めいた設定ながら、その底流には人間の運命や選択についての深い問い掛けがある。宮部みゆきの筆は相変わらず冴えており、一編一編が短編としても秀逸だ。 何より興味深いのは、ヒロイン・おちかの心身の成長を丁寧に描き続けてきたシリーズが、ここで一つの完結を迎えるという構成である。傷ついた心が癒やされ、やがて自身の人生に向き合う姿勢へと変わっていく過程が説得力を持つ。 「怖いけれども癒になる」という説明は言い得て妙。エンタメとしての面白さと、文学的な深さのバランスが絶妙だ。このシリーズは話題作として押さえるべき一冊。第一期の完結ということなので、ここで区切りをつけても良し、次の展開を待つも良し。いずれにせよ、傑作シリーズとして長く記憶に残るだろう。
三島屋シリーズも第五巻。すっかり虜になってしまいました。おちかの成長の物語として始まったこのシリーズが、ここまで来ると本当に味わい深い。 今回の貸本屋の若旦那が語る「読む者の寿命を教える冊子」の話は、実に不気味でありながら、どこか儚い。自営業をやっていると、時間の大切さについて考えさせられることが多いのですが、この話はそうした思いをぐっと刺激してくれました。 おちかが何か大切な決断をする場面も感動的。シリーズを通じて彼女がどう変わっていったのか、その軌跡が見える作り方が本当に素晴らしい。怖い話ばかりなのに、読んだ後には心が温かくなる。そのバランス感覚が宮部みゆき作品の真骨頂ですね。 第一期完結という区切りも絶妙。気軽に手に取った時間小説のつもりが、こんなに惹き込まれるとは。続編も当然待ち遠しいです。
三島屋シリーズの第五弾、ついに読み終えました!このシリーズ、毎巻ハマるんですよね。SNSでも話題になってたし、期待値高く手に取ったんですが、期待を上回る面白さでした。 今回は貸本屋の若旦那・勘一が語り手として登場。「寿命を教える冊子」という一見ホラーな設定なのに、それがストーリーの中で本当に深い意味を持ってくるんです。怖いのに引き込まれる感じ、このシリーズの醍醐味だと思う。 何より良かったのは、おちかのキャラクター成長。前作までの悲しみを引きずった雰囲気から、一皮むけた感じが自然に描かれているんですよ。そしてシリーズ第一期の完結編ということで、きちんと区切りがついてるのも満足度高い。 江戸時代の空気感も相変わらず素敵で、読んでいて別世界に引き込まれます。怖いけど癒やされる、そんな不思議な読後感。次の展開も気になるし、このシリーズはしばらく推し続けそうです。
三島屋シリーズもいよいよ第一期の完結を迎えるということで、期待を持って手に取りました。本シリーズの魅力である江戸情緒と怪談の世界観は相変わらず丁寧に描かれており、読み始めるとぐっと物語に引き込まれます。 特に印象的だったのは、貸本屋の若旦那・勘一が語る「寿命を教える冊子」の話。その不気味さと、それに翻弄される浪人の人生の転換点という設定は、シリーズを通じて培われた佐渡島庸平さんの筆力を感じさせます。 ただ、第五巻ということもあり、ストーリー構成には若干の疲労感を感じなくもありません。おちかの成長物語としての大きな転換点は描かれているのですが、その過程にやや既視感があるというか、シリーズを通じて何度か見てきたパターンの繰り返しに思えてしまう部分もありました。 それでも「怖いけれども癖になる」というキャッチコピー通り、読了後もしばらく余韻が残る良作ではあります。人文書を主に読む私としては、怪談の奥に隠された人間ドラマの部分にこそ価値を感じるのですが、本巻はそのバランスが完全には取れていないような気がしました。シリーズの終わりとして、もう一段階の深掘りがあれば、より完璧だったのではないでしょうか。