感想
話題の本屋大賞受賞作ということで、期待を持って読み始めました。ピアノ調律という地味だけど奥深い職人仕事を題材にした作品で、確かに独特の世界観を持っていますね。 ただ、正直なところ、私の心がグッと掴まれるほどではありませんでした。登場人物たちとの交流シーンは丁寧に描かれていて、好感は持てます。でも、その温かさだけで突き進む物語に、もう少し深みや葛藤の描写があったら、さらに引き込まれたのではないかなと感じます。 働き盛りの私たちの世代としては、主人公が淡々と前に進む姿勢には共感できる部分もあります。一方で、職業を通じた自己実現というテーマは、新しくはない印象も受けました。 映画化されるほどの作品だからこそ、スクリーンで見たら、また違った感動があるかもしれません。著者の静謐な筆致は確かに上手いのですが、小説としては、もう一段階の何かが欲しかったというのが率直な感想です。良い本ですが、特別な一冊とまでは言えないかな、というところでしょうか。