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木製の王子 新装版

木製の王子 新装版

麻耶 雄嵩 講談社 2026年2月13日

麻耶雄嗣の『木製の王子』を読み終えた。新装版とのことだが、初めて手にした作品だ。 比叡山麓の奇妙な屋敷を舞台にした密室的なミステリで、まず設定の秀逸さに惹かれた。高名な芸術家が建てた屋敷という非日常の空間設定が、物語に緊張感をもたらしている。殺人事件自体も、容疑者全員にアリバイがあるという古典的でありながら効果的な謎の構築だ。 麻耶特有の論理的な推理展開は期待通りで、登場人物たちのアリバイが分単位で緻密に構築されているところは、著者の執筆技術の高さを感じさせる。ただ、その複雑さゆえに、中盤では読む側の集中力も相当求められた。55を目前にした身には、確認しながら読み返す箇所も少なくない。 主人公・如月烏有の造型も興味深く、彼が惨劇に遭遇する運命的な在り方に、著者の物語構成力が表れている。論理と物語性のバランスが取れた、充実したミステリだと感じた。邦訳ミステリ好きなら一読の価値がある。