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俺たちの箱根駅伝 上

俺たちの箱根駅伝 上

池井戸 潤 文藝春秋 2024年4月24日

池井戸潤の『俺たちの箱根駅伝 上』を読み終えた。正直なところ、この著者の作品は安定感があり、期待を裏切らない。本作も然りだ。 箱根駅伝という日本のスポーツ文化を題材にしながら、単なるスポーツ小説に留まらない構成が見事である。落ちぶれた名門大学の復活劇、その背景にある人間関係や葛藤、そして中継の舞台裏に登場するテレビ局スタッフの思惑まで、複数の視点から物語が紡がれていく。自営業を営む身として、組織を動かす人間たちの心理描写には格別の興味を覚える。 主将・青葉隼斗の渾身の走りを追う一方で、プロデューサー徳重の葛藤も丁寧に描かれている点が秀逸だ。こうした多層的なストーリー展開は、著者の真骨頂といえよう。 惜しむらくは上巻ということで、クライマックスが未だ先であること。続きが気になってならない。下巻の出版を心待ちにしている。評価の高い理由が十分に理解できる一冊だ。