ひろの本棚
凍りのくじら

凍りのくじら

辻村 深月 講談社 2008年11月1日

話題の『凍りのくじら』をようやく読み終わりました。辻村深月の最新作ということで期待していたんですが、期待以上でした。 父親の失踪、藤子・F・不二雄へのオマージュ、そして謎めいた青年との出会い――これらの要素が絶妙に絡み合う構成が秀逸です。特に高校生の理帆子が本の世界に逃げ込むことで心を守ってきた状況が、冒頭で丁寧に描写されているので、彼女の変化がすごく胸に響きました。 正直に言うと、中盤の展開では「ここからどう着地するんだろう」と不安もありました。でも読み進めていくと、著者が何を書きたかったのかが見えてきて、その意図が素晴らしい。SFとも感動エッセイとも違う、辻村さん独特の世界観がそこにある。 新社会人の今、仕事で疲れた心にこういう本は染みます。親世代と次世代の違い、そして本が持つ力についても考えさせられました。講談社文庫で手軽に読めるのも嬉しい。読むなら今がいいですよ。