『スピノザの診察室』の続編ということで、さっそく手に取ってみました。前作を読んでいなくても十分楽しめるというのが本当で、医師・雄町哲郎という主人公のキャラクターにすぐに引き込まれてしまいます。 何より印象的なのは、「医療では人は救えない」というテーマの問い方です。医学の限界と人間の幸福について、哲学的に丁寧に考察されているのに、決してお堅くなく、人間ドラマとしての面白さが失われていない。これって本当に難しいバランスだと思うんです。 57歳になると、自分たちの親の世代の医療や死について考える機会が増えます。そういう時期だからこそ、この作品で描かれる「命とは何か」「幸福とは何か」という問いが、心にじんわり響いてきました。 映画化決定というのも納得です。この作品の持つ温かさと深さ、そして現役医師だからこそ書けるリアルな視点は、多くの人の心を揺さぶると思います。人生経験を積んだ今だからこそ読んで欲しい一冊です。