近藤の本棚
感想

直木賞受賞作ということで期待値が高かったのですが、期待以上でした。 豆腐職人という、一見地味な題材をここまで深く、そして美しく描ける筆力に引き込まれました。永吉という男が自分の技術に真摯に向き合う姿勢は、同じく手に職を持つエンジニアとして共感するところが多く、「職人とは何か」を改めて考えさせられた気がします。 京と江戸の味覚の違いに悩みながら少しずつ道を切り開いていく夫婦の物語は、単なる成功譚ではなく、人生の営みそのものが描かれている。親子二代にわたる構成も、時の流れと世代交代のなかで技術や想いがどう受け継がれていくのかを丁寧に追っていて、読み終わった後に深い余韻が残ります。 文庫本という手軽さも魅力的。仕事の合間に少しずつ読み進めましたが、江戸時代という時代設定の親しみやすさも相まって、途中で読むのが嫌になることもなく、むしろ続きが気になって仕事の休憩時間も本を手に取っていました。ベストセラーになるだけの理由が確かにある、そんな一冊です。