江戸の芝居町を舞台にした、実に面白い作品だ。仇討ちという古典的なテーマを扱いながら、現代人の心に強く響く何かがある。 菊之助という人物の行動と、それを巡る人々の視点の違いが秀逸だ。一見すると明確な「快挙」と見なされている事件が、本当にそうなのか。その問いかけが物語を通じて静かに、しかし確実に読者の心に問いかけてくる。ページをめくる手が止まらなかった。 管理職として組織の中で過ごしていると、正義とは何か、行動とは何かを問い直す機会も少ない。仕事の論理で判断してしまうことばかりだ。だからこそ、この作品で丁寧に描かれる複雑な心情や、人間関係の機微に触れると、本当にリフレッシュされる思いがする。 江戸の空気感も素晴らしく、まるで自分も木挽町の雪の夜に立っているような没入感を感じた。気軽に読める小説として始めたが、読了後は静かな感動とともに、いろいろなことを考えさせられた。こういう作品こそ、やはり読書の醍醐味だと改めて実感させてくれる一冊だ。