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十角館の殺人 <新装改訂版>

十角館の殺人 <新装改訂版>

綾辻 行人 講談社 2007年10月1日

1987年の初版刊行以来、ミステリ好きの間で伝説的な作品として語られ続けてきた『十角館の殺人』をようやく読破した。フリーランスという職業柄、時間の融通は利くはずなのに、なぜか手を出しそびれていた一冊である。 実際に読んでみると、その評判の理由が即座に理解できた。孤島の奇妙な館へ招かれた大学ミステリ研究会のメンバーたちが、次々と殺人の犠牲になっていくという基本的な設定自体は、一見すると既知のものに思える。しかし綾辻行人の筆致は緻密で、読者は物語に深く引き込まれていく。 何より秀逸なのは結末だ。ここで言及することはできないが、これまで読んできた数多くのミステリの中でも、類稀なる構想と完成度である。37年前の作品とは思えないほど鮮烈で、新本格ミステリの源流がいかに質の高いものであったかを改めて認識させられた。 文庫版としての新装改訂版も読みやすく、この傑作に触れるなら今がむしろ最適のタイミングだろう。ミステリ愛好家のみならず、一般的な読書家にも強く推薦したい。