直木賞受賞作ということで手に取りましたが、期待以上の面白さでした。一絃琴という限定的な楽器を通じて、明治時代の女性たちの人生と葛藤を描いているという設定だけで既に惹かれていたのですが、読み進めるにつれてその奥深さに引き込まれました。 師弟の関係、愛する者との死別、そして伝統を守ることの難しさ。エンジニアとしてコード書いてる身ですが、こういう人間ドラマ、特に女性たちの矜恃と情念の描写は本当に素晴らしい。苗と蘭子の確執のくだりは特に胸を打たれました。 文庫本という手軽さもあって、通勤時間や休憩時間に気楽に読めるのがいいですね。重くなりすぎずに深い物語を味わえるバランス感覚が秀逸だと思います。一絃琴という地味な楽器だからこそ、かえって音色の表現が活きてくるというか。久しぶりに心が満たされる読書体験ができました。