そうたの本棚
ほかならぬ人へ

ほかならぬ人へ

白石一文 祥伝社 2013年1月1日

感想

直木賞受賞作ということで期待して読んでみたんですが、正直なところ、ちょっと物足りなかった感じです。 愛する者に裏切られた主人公が新しい感情に目覚めていく—という基本構造は理解できるし、そういう人間ドラマの描き方は上手いと思います。ただ、物語全体としては、何か力強さに欠ける印象を受けてしまいました。登場人物たちの心理描写は丁寧なんですが、それがストーリー全体の推進力には繋がってない感じというか。 恋愛小説として「愛とは何か」を問い直す試みは評価できるんですが、39歳の自分が読むと、そこに描かれた愛のかたちが、どうも観念的に見えてしまうんですね。もっと泥くさい、生身の人間らしい葛藤があれば、より心に響いたかもしれません。 悪い本ではないです。むしろ丁寧に書かれた作品だと思う。ただ、自分の好みという観点では、もう一歩何かが欲しかったというのが正直な感想です。時間に余裕がある時に、ゆっくり読むには良いかもしれません。