新書大賞受賞という話題性に引かれて手に取ったが、期待以上の収穫があった。管理職として部下の人間関係や心理的な課題と向き合う機会が多いなかで、この本が示すカウンセリングの本質が実務的に役立つ。 従来、カウンセリングは「傾聴」という受動的イメージを持っていたが、本書が強調する「5つの介入」という考え方は目からウロコだ。身体や視点の変化を促し、クライアントを能動的に動かすアプローチは、組織内の問題解決にも応用できる視点がある。 特に印象的だったのは「生き延びることから、ちゃんと生きることへ」という二層のゴール設定である。これは個人の心理臨床だけでなく、企業のメンタルヘルス施策や人材育成においても重要な視点だろう。臨床心理学の複数の流派を俯瞰しながら、メタレベルの原論を立てる構成も秀逸で、理系的な思考を持つ人間としても納得できた。 話題性で始まったが、実務的な価値と理論的な深さの両立。経営層や人事担当者にも強く勧めたい一冊だ。