感想
人気脚本家の初めての長編小説ということで、どんな作品か興味を持って手に取りました。死という重いテーマを扱いながらも、タイトルの通り「昨夜のカレー、明日のパン」といった何気ない日常の風景が物語全体を温かく包み込んでいるのが印象的です。 妻テツコと父ギフが、若くして亡くなった一樹との思い出の中でゆっくり歩んでいく様子が、とても丁寧に描かれています。脚本家ならではの「コトバの力」がここまで活きる作品は珍しい。会話や独白の中に、さらりと心を打つ表現が散りばめられていて、読む度に違う発見がありました。 悲しみと幸せが同時に存在する世界観は、この年代だからこそ深く響くのかもしれません。人生経験を重ねた今だからこそ、失うことの大切さや、残された時間の価値を感じることができたと思います。重くなりすぎず、でも真摯に向き合った素敵な作品。慎重に本選びをしてきた私としても、自信を持ってお勧めできます。