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文庫 少年の日の思い出

文庫 少年の日の思い出

ヘルマン・ヘッセ / 岡田朝雄 草思社 2016年2月2日

ヘッセの初期短編集ということで、慎重に選びましたが、買ってよかったと思います。 表題作の「少年の日の思い出」は、思いがけない形で青年期の後悔を描いた作品。蝶の標本を巡る話なのですが、子どもの頃の無邪気さと残酷さが同時に存在する瞬間を、こんなに繊細に書けるものかと感心しました。訳者が昆虫好きということで、これまでの誤訳を詳しく正してくれているのも、細部を丁寧に読む楽しみが増します。 『車輪の下』と同時代の作品とのことですが、そちらよりもむしろ心理描写が深く、大人になった今だからこそ共感できる部分が多いです。パート勤務で時間に余裕ができた今の時期に読むと、かつての自分の青春時代を思い出させられます。 どの短編も短いながら完成度が高く、一気読みするのではなく、何日かに分けてゆっくり味わうように読むのがいいと思います。古い作品ですが、人間の心の機微は変わらないのだな、と改めて感じさせてくれました。