人生も後半戦に入った身だからか、この本は妙に心に響きました。会社を辞めて人生に迷う39歳の息子と、映画とギャンブルに明け暮れる父親という設定が、なんとも親子関係について考えさせられます。 映画への純粋な愛情が、壊れかけた家族を結びつけていく過程が素晴らしい。著者・山田洋次さんならではの温かみのある筆致で、重い題材を決して暗くさせていません。借金だの人生の挫折だのといった現実的な問題を抱えながらも、映画というもの、そして共通の興味を通じて家族が再生していくという物語は、昭和的な人情味に満ちています。 ただ、話が進むにつれやや展開が予定調和的に感じられたのは事実。もう少し複雑な葛藤があってもいいのではないかという思いもあります。それでも、映画好きはもちろん、家族との関係に疲れた中年の方、人生について静かに考えたい方には、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。文庫版で手軽に読めるのも、この季節の夜長にぴったりですよ。