慎重派の私が、ここまで一気読みしてしまった作品は珍しい。 この本は詐欺師の二人が主人公という設定で、最初は正直なところ不安だった。パート仲間も読んでいるというので試しに手にとってみたのだが、蓋を開けてみるとこれが素晴らしい。 人生に失敗した中年男二人の日常に少女が現れ、やがて一緒に暮らすようになる。その過程で、彼らの隠された過去が少しずつ明かされていく。詐欺という題材であっても、決して下劣ではなく、むしろ人間の深い部分が丁寧に描かれている。 何より驚いたのは物語の構成だ。途中まで予想できないような展開が次々と訪れ、最後にはすべてが繋がる快感を味わえる。道尾秀介というこの著者の実力の程が分かる仕上がりである。 64年生きてきて、ここまで感動した小説は久しぶりだ。人生の転機や後悔といったテーマが、心に深く届く。文庫本という手頃なサイズで手に取れるのも良い。同年代の方には特におすすめしたい一冊である。