慎重に本を選ぶ方なので、レビューの評判を見てから手に取ることが多いのですが、この作品は本当に良かった。64になって、こんなにも心が揺さぶられる小説に出会えるとは思いませんでした。 高校生の女の子が、図書館で出会った青年との関係を通じて、自分の内面と向き合っていく。一見、淡い青春小説のようですが、藤子・F・不二雄という要素が絡み合い、思わぬ深さへと引き込まれます。失踪した父との関係、本を通じた世界との繋がり方――こうしたテーマが、年を重ねた私にも共鳴するものがありました。 何より感心したのは、辻村深月さんの構成力です。物語が進むにつれて、点在していた要素が繋がっていく快感。ミステリーとしての仕掛けも見事で、推理小説好きな私も満足しました。文庫本で手軽に読めるのも嬉しい。 人生経験を重ねた今だからこそ、この物語の奥行きが理解できた気がします。同年代の方にも、若い方にもぜひ読んでいただきたい傑作です。