感想
フリーランスになってから、人間関係や仕事の悩みで笑いが少なくなったと感じていたのだが、この本はそんな日常を吹き飛ばしてくれた。 著者の視点の切り取り方が秀逸で、誰もが経験しているはずの些細な出来事が、こんなにも笑える素材に変わるのかと驚かされる。小学生時代の無邪気な失敗譚から始まり、大人になってからのインド珍道中、さらには非常にプライベートなテーマまで赤裸々に綴られている。それでいて品を失わない表現力は、本当に力量がある。 仕事の疲労で判断力が落ちている夜間に読むのは避けた方がいい。電車の中で読んでいたら、思わず吹き出しそうになってしまったからだ。こういう危険性も含めて、それほどの威力を持ったエッセイだ。 文庫化に伴う周防正行監督との対談も興味深い。創作者同士の対話を通じて、著者の創作姿勢がより深く理解できる仕掛けになっている。 慎重に本を選んできた身として、これは間違いなく手にとって損なし。大人が読むべき日本のエッセイの傑作だと確信している。