2020年本屋大賞受賞作ということで、期待と少しの懸念を持ちながら手に取りました。結論として、その期待は十分に報われました。 本作は「愛ではない、けれどそばにいたい」というコピーが示す通り、従来の恋愛小説の枠を超えた、極めて複雑で繊細な人間関係を描いています。フリーランスとして生きる中で、様々な人間関係の相互作用を目の当たりにしてきた身としては、登場人物たちの心理描写の細やかさに引き込まれました。 特に印象的だったのは、作者がこの関係性をどこまでも誠実に描き切ろうとする姿勢です。安易な結論に逃げず、曖昧さや葛藤をそのまま映し出している。50代手前の今だからこそ、人間関係の本質について改めて考えさせられました。 映画化もされているようですが、本作のような内面的な深さは、やはり小説の方が伝わるのではないかと感じます。じっくり、ゆっくり読むことをお勧めします。ページをめくる手が止められなくなる傑作です。