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生きとるわ

生きとるわ

又吉 直樹 文藝春秋 2026年1月28日

火花から10年という期待値が大きかっただけに、正直なところ複雑な感想です。 岡田と横井という旧友の関係性を軸に、人間の弱さや執着を描く試みは興味深いのですが、物語が進むにつれて「結局どこに向かっているのか」という問いが頭をもたげました。闇と笑いを両立させるというコンセプトは理解できますが、その融合が完全に成功しているとは言い難い。笑いのパートと深刻なパートが時々ちぐはぐに感じられる箇所がありました。 フリーランスの視点から言うと、お金を巡る人間関係のもつれについては非常にリアルで、他人事ではない緊迫感がありました。その点は評価できます。ただ、キャラクターの心理描写がもう少し掘り下げられていれば、より強い共感を持てたのではないか、という惜しさが残ります。 慎重に選んで読むタイプの身としては、事前の評判ほどの衝撃を受けませんでしたが、悪い本ではありません。読んで損したとは思いませんが、積極的に他人に勧めるほどでもない、というのが正直な感覚です。