みっちゃんの本棚
取調室のハシビロコウ

取調室のハシビロコウ

江口大和 時事通信出版局 2026年1月7日

実話に基づいた本書は、刑事司法制度の根幹に関わる重大な問題を浮き彫りにしています。弁護士という社会的地位を持つ人物が、事実無根の疑いで逮捕され、250日間の勾留という極限の状況に置かれるという設定だけで、既に読者の想像力は掻き立てられます。 著者が詳細に記した取調室での経験は、単なるサスペンス的興味を超えて、司法制度における被疑者の人権、検事の取調べ手法の妥当性といった根本的な問いを投げかけています。論理的にこれらの問題を追究しながらも、一個人の尊厳をかけた闘いという人間らしさが失われていない点が秀逸です。 人文・思想書の読み手として、制度批評という側面と、個人の葛藤を描くエッセイ的側面が融合した本書の構成は、大変バランスが取れていると感じました。社会人として日々の業務に従事する中で、私たちが当然と思い込んでいる「司法」という機構について、改めて思考を深める契機となる良著だと思います。