現代の「推し文化」について、ここまで深掘りした小説があったんだという驚きが最初の感想です。アイドルやタレントを応援することの何が人の心をこんなに掴むのか、それを複数の視点から丁寧に描写していて、読んでいて自分の推し活や「好きなもの」への向き合い方を考え直させられました。 3人の主人公たちの視点がそれぞれ説得力があるんですよね。運営側の葛藤、ファン側の心理、そして距離を置いた視点——これらを交互に読み進めることで、同じ現象がいかに多角的に見えるかが理解できます。特に「物語を使う」というテーマが重く響きました。 自営業をしていると、顧客心理やマーケティングについついビジネスの目で考えてしまうんですが、この本は単なる経済分析ではなく、そこに存在する人間の感情や欲望を丁寧に掬い上げています。決して説教的にならず、ページをめくる手が止まりません。 沈みゆく日本社会の中で、人々が求めているものは何か——その答えを求める旅に連れていかれる一冊です。気軽に読める小説としても、社会を考察するエッセイとしても秀逸でした。