芥川賞受賞作という話題性だけで手に取った本でしたが、これが思いのほか心に響きました。 36歳でコンビニ店員として生きる主人公・恵子の日常を描いた作品なのですが、多くの人が「異常」と感じるであろう人生選択を、本人は何の違和感もなく受け入れている。その徹底した世界観が、実は私たち医療従事者にも通じるものがあるんです。 マニュアルに従うことで安心を得る、社会の「正常な部品」でいることで心の平穏を保つ。長年病院で患者さんや同僚と接する中で、私自身もどこか似た心理を抱えていたのかもしれません。 何より素晴らしいのは、著者が恵子を一方的に批判することなく、むしろ彼女の視点から世界を丁寧に描いている点。違いを違いとして受け入れる温かさがあります。短編ながら考えさせられることが多く、読み終わった後も何度も場面が蘇ってきます。 気軽に読める小説として、そして人間関係について考えるきっかけとして、とても良い一冊でした。