ゆーきの本棚
さようなら、オレンジ

さようなら、オレンジ

岩城けい 筑摩書房 2013年8月1日

感想

太宰治賞を受賞した話題作ということで、手に取ってみました。オーストラリアの田舎町を舞台に、異なる境遇の二人の女性が出会い、関係を深めていく物語です。 サリマはアフリカからの難民、ハリネズミは自分の夢を後回しにして渡豪した日本人女性。一見すると全く異なる人生を歩んできた彼女たちが、職業訓練学校で英語学習を通じて繋がっていく過程が丹念に描かれています。 何しろこの年になると、人生の選択肢の重さというものが身に染みてわかります。夫について異国へ渡った女性、子どもを育てるため懸命に働く難民女性——それぞれが人知れず抱えているものの大きさに、じっと考えさせられました。 著者の視線は温かく、決して説教的ではありません。むしろ二人の小さな日常の会話や思考の中に、人間らしさが息づいているのが良い。話題作とはいえ、きちんと文学として完成した一冊だと思います。定年後、人生の後半戦に入った世代の方にも強くお勧めしたい作品です。