又吉直樹が『火花』から10年をかけて書き上げた新作だと聞いて、すぐに手に取りました。正直、期待値は高かったんですが、それを裏切らない仕上がりに感心しました。 公認会計士という肩書きで順調に見える主人公が、高校時代の友人への貸金500万円がきっかけで人生が狂っていく。この古典的なモチーフながら、又吉の手にかかると全く新しい話になる。人間の弱さと愚かさが次々と積み重なっていく様子が、悲劇とも喜劇ともつかない不思議な緊張感で描かれています。 会社員として生きていると、誰しも予期しない出来事に足をすくわれる恐怖を感じることがあります。この本はその恐怖を言語化し、どこか笑わせてくる。人生のやりきれなさと、そこに存在する「笑い」の両立が本当に上手い。 読み終わって思うのは、これは単なる娯楽小説ではなく、現代を生きる大人が直面する問題への問いかけだということ。話題作として読む価値は十分にあります。