感想
新社会人になって、仕事で疲れた日の夜に読む本を探していました。書評サイトで高評価だったこちらを手にとってみたのですが、本当に正解でした。 祖母の形見の衣装簞笥が異世界へのドアになるという設定だけで既に引き込まれるのですが、そこから展開する物語の切なさと深さに驚きました。主人公・奈枝とセイクリッドの関係が時間の流れという残酷な条件によって複雑に絡み合っていく様は、ただのファンタジー恋愛小説では終わらない何かを感じさせます。 特に印象的だったのは、二人の想いがすれ違ったまま繋がりが断たれてしまう場面です。その後の展開については触れられませんが、その切なさだけで何度も読み返したくなる作品です。文体も読みやすく、一気読みしてしまいました。異世界ものでありながら、どこか現実的で温かみのある世界観も魅力的です。新刊で探すより文庫版で手軽に読めるのも嬉しい。疲れた心を優しく包んでくれる一冊でした。