てつの本棚
一次元の挿し木

一次元の挿し木

松下 龍之介 宝島社 2025年2月5日

このミステリーがすごい!大賞受賞作だけあって、確かに面白かった。古人骨のDNA鑑定という、僕たち教員の日常からは遠い領域をテーマに、ミステリーとしてきちんと成立させているところが素晴らしい。 何より魅力的なのは、情報の提示のされ方だ。謎の散らばせ方、読者を惑わすタイミングが絶妙で、ぐいぐい引き込まれていく。著者の文章力が高いというのがレビューでも指摘されているが、本当にそれを感じた。遺伝人類学の専門知識を自然に物語に組み込みながらも、専門用語で読者を置き去りにしない。バランス感覚が見事だ。 終盤の真相に至る流れは、ページをめくる手が止まらなくなる。「これはそういう意味だったのか」という驚きと納得が同時に訪れる感覚。教える仕事をしていると、生徒にもこういう「あ、そか」という瞬間を経験させたいって思うんだけど、この小説はまさにそれをやってくれた。 気軽に楽しめるエンタメ性と、きちんとしたミステリーとしての構成。両立は難しいはずなのに、見事に成功している。正当な評価だと思う。