てつの本棚
まほろ駅前多田便利軒

まほろ駅前多田便利軒

三浦 しをん 文藝春秋 2009年1月1日

直木賞受賞作ということで期待して読んでみましたが、期待以上でした。便利屋の多田と、そこに転がり込んできた行天という二人の男が、駅前で様々な依頼をこなしていく。一見ありふれた日常のエピソードなのに、著者の手にかかると不思議と魅力的になってしまいます。 教員という仕事柄、人間関係を描く作品には敏感なのですが、この二人の掛け合いの自然さと温かさがいいんです。全く異なる性質の二人が協力することで、ほのぼのとしながらも時々きな臭くなる展開。その絶妙なバランスが秀逸です。短編的なエピソードの積み重ねなので、気軽に読めるのも良かった。教員生活で疲れているときに、このような軽やかで人情味のある話は本当に心地よいです。 著者の観察眼の鋭さと、物語を構成する力の高さを感じました。気軽に楽しめるエンタメ作品でありながら、人間の魅力を丁寧に描いている。こういう本こそ、多くの人に読んでもらいたいなと思います。