北町奉行所シリーズの第八弾。このシリーズの常連としては、もう手放せなくなっている。毎度のことながら、時代小説の醍醐味をしっかりと押さえた傑作である。 今作は、小間物問屋の元番頭の死と、火事跡で発見された若い女性の殺人事件が巧みに絡み合う。その接点となる「鶯色の帯」という細部にこだわったディテールが、物語全体の緊張感を高めている。主人公の清之介と木暮信郎の関係性も、これまでの積み重ねがあるからこそ、より深みが増している。 文章の運びが相変わらず見事で、江戸の街並みや風俗描写も自然に頭に浮かぶ。五十代も後半に差し掛かると、こうした歴史小説の味わいが実に良く理解できるようになるもので、作者の手腕に感服する。ページをめくる手が止まらない。 シリーズの奥深さを知る読者ほど、満足度が高いだろう。第一巻から追いかけてきた読者には、必読の一冊である。