雲の果

雲の果

あさのあつこ

出版社:光文社 出版年月日:2020/02/05

光文社 | 2020/02/05

4.17
本棚登録:7人

みんなの感想

北町奉行所シリーズの第八弾ということで、シリーズ途中からの読破でしたが、この作品は十分に独立して楽しめました。元々、江戸時代の事件推理ものは好きですが、本作は特に緊張感のあるストーリー運びが秀逸です。 火事で見つかった女性の遺体、そして遺品から発見される鶯色の帯。これらの小道具が巧妙に事件を複雑に展開させていく様は、著者の構成力の高さを感じさせます。主人公・木暮信郎と清之介という二つの立場から事件に迫る視点も効果的で、読み進めるにつれ伏線がきちんと回収されていく快感を味わえました。 フリーランスという不規則な生活の中で、この手の歴史冒険小説は気分転換に最適です。ただ、初めての方はシリーズ第一巻から読むことをお勧めします。登場人物の背景や関係性がより深く理解でき、さらに物語に没入できるでしょう。 丁寧に構築された世界観と、衝撃の真相。エンタメ性と文学性のバランスが取れた、良質な時代小説です。

北町奉行所シリーズの第八弾、『雲の果』を読み終わりました。相変わらず見事な傑作です。 このシリーズはもう何度も読んでいますが、いつも引き込まれるのは登場人物たちの複雑な人間関係。番頭の死、焼けた仕舞屋での殺人事件、そして謎の鶯色の帯へと繋がる真相へのミステリーの牽引力が素晴らしい。定町廻り同心の木暮信郎と商人・清之介の対立と協力の緊張感が、物語全体を貫く緊張の糸になっています。 何より感心するのは、江戸という時代設定の中で、人間の業や感情がこれほど深く描かれていることです。商売人としての誇り、武士としての義理、そして人間らしい弱さ。すべてが複雑に絡み合い、ページをめくる手が止まりません。 年配の読者である我々にとっても、人生経験があるからこそ余計に登場人物たちの心情が理解できる。文庫本のコンパクトなサイズも扱いやすく、寝る前の愉しみにぴったりです。今話題の作品として、皆さんにも強くお勧めしたい一冊です。

北町奉行所シリーズの第八弾。このシリーズの常連としては、もう手放せなくなっている。毎度のことながら、時代小説の醍醐味をしっかりと押さえた傑作である。 今作は、小間物問屋の元番頭の死と、火事跡で発見された若い女性の殺人事件が巧みに絡み合う。その接点となる「鶯色の帯」という細部にこだわったディテールが、物語全体の緊張感を高めている。主人公の清之介と木暮信郎の関係性も、これまでの積み重ねがあるからこそ、より深みが増している。 文章の運びが相変わらず見事で、江戸の街並みや風俗描写も自然に頭に浮かぶ。五十代も後半に差し掛かると、こうした歴史小説の味わいが実に良く理解できるようになるもので、作者の手腕に感服する。ページをめくる手が止まらない。 シリーズの奥深さを知る読者ほど、満足度が高いだろう。第一巻から追いかけてきた読者には、必読の一冊である。