三浦の本棚
流浪の月

流浪の月

凪良 ゆう 東京創元社 2019年8月29日

本屋大賞受賞作ということで期待を持って手に取りました。確かに文章の力強さと、主人公たちの複雑な関係性を丁寧に描く構成は評価できます。社会的な常識と個人的な感情の葛藤、それを支える人間関係の描き方には、創作の巧さを感じました。 ただ、私自身が感情移入できなかった部分があるのが正直なところです。周囲の反対を押し切って関係を続けるという選択肢への説得力が、読み進めても十分に得られませんでした。「愛ではない。けれどそばにいたい」というコンセプトは興味深いのですが、その先にある人間関係の行き着く先についても、もう少し深掘りがあれば良かったと感じます。 映画化されるということで、スクリーンでの表現がどう活かされるのか気になります。小説として完全に満足はしませんでしたが、それでも賞を獲得した意味は理解できる作品です。万人向けではないかもしれませんが、このテーマに惹かれる方なら一度目を通す価値はあると思います。