最近SNSで話題になっていたので気になって手に取りました。「香り」という一見地味なテーマを中心にした物語ですが、これが本当に引き込まれる。 調香師・朔のもとに訪れるクライアントたちの秘密と、彼自身の孤独がじっくり丁寧に描かれていく構成が素晴らしいです。公務員という職業柄、複雑な人間関係や隠された事情を持つ人たちの心理に引き付けられやすいのかもしれません。この作品は、一人ひとりの背景にある物語を香りというメディアを通して浮かび上がらせていく。その手法が非常に上手い。 特に印象深かったのは、香りが単なる香水ではなく、思い出や感情、人生そのものと結びついているという表現方法。読んでいて「あ、この香り私も知りたい」と思わせてしまう魔力があります。 やや長編で、仕事の合間に少しずつ読み進める感じでしたが、むしろそうやってじっくり味わうのに向いている本だと思いました。話題になっている理由が納得できる、素敵な一冊です。