山口の本棚
感想

1978年の上京という設定に、思わず自分の若き日々を重ねてしまいました。バブル期の東京を舞台にした青春グラフィティということで、懐かしさと眩しさが詰まっているだろうと予想しながら読み始めたのですが、期待以上でした。 主人公・久雄が親の反対を押し切って東京へ出てくる場面から、既に引き込まれます。地方から出てきた若者が、急速に変わる都市の中で、時に戸惑い、時に希望を感じながら少しずつ大人になっていく過程が、本当に丁寧に描かれているんです。 あの時代の東京の空気感、若者たちの熱気、夢と現実のギャップ。全てが懐かしく、そして切実に感じられました。直木賞作家だからこそ出来る、細やかなディテールと人間関係の描き方が素晴らしい。気軽に読めるのに、読み終わった後は心が温かくなります。 人生の折り返しを過ぎた今だからこそ、この物語の良さが一層響くのかもしれません。あの時代を知る方にも、知らない世代にも、ぜひ手に取ってほしい一冊です。