相剋の森
集英社 | 2006/11/25
みんなの感想
直木賞受賞作の流れを汲む「森」シリーズということで、期待を持って手に取りました。マタギの言葉「山は半分殺してちょうどいい」をめぐる人間と自然との関係性という、なかなか深いテーマが前面に出ています。 編集者・美佐子を中心に、人間が他の生き物を殺すことの意味、自然との共生について問い直そうという著者の意図は伝わってきます。文庫本という手軽さもあり、じっくり読み進めることができました。 ただ、率直に申し上げると、この大きなテーマを扱いながらも、物語としての推進力や、読み手の心を揺さぶるような場面に少々物足りなさを感じました。哲学的な問いかけと小説としての面白さのバランスが、私にはもう一つ欠けていた印象です。 同世代の知人にも勧められている話題作だからこそ、より心に残る何かがあるかと期待していたのですが…。決して悪い本ではありませんが、このシリーズの前作や他の著作と比べると、個人的にはやや見劣りしてしまいました。
直木賞受賞作に続く「森」シリーズ現代編ということで、手に取ってみた。期待通り、いや期待以上の傑作だった。 編集者・美佐子がマタギから聞く「山は半分殺してちょうどいい」という一言が全体の基軸になっている。この言葉の重みが、読み進むにつれ じわじわと沁みてくる。人間が自然とどう向き合うべきか、生命をめぐる根本的な問いが、小説という形で見事に立ち上がっている。 仕事でも人間関係でも、何らかの「間」を取ることの大切さを感じている自分の年代だからこそ、この作品がグッときたのかもしれない。都市と自然、人間と動物、そうした相対立する世界を行き来する登場人物たちの姿を通じて、一種の思想的な問題提起もされている。 集英社のこういった話題作は逃さないようにしているが、これは文句なく傑作。骨太なテーマなのに読みやすく、一気読み必至だ。迷っている同世代の読者には強くお勧めしたい。