雄一の本棚
そして誰もいなくなった

そして誰もいなくなった

アガサ・クリスティー / 青木 久惠 早川書房 2010年11月15日

感想

長年、推理小説の傑作を求めて書棚を増やしてきましたが、この作品がここまでの完成度を持つとは正直驚きました。孤島に集められた十人が、童謡の歌詞通りに消えていくという設定だけで既に秀逸ですが、真犯人が誰なのか、なぜこんなことを企てたのかという謎の重ねられ方が見事です。 慎重に選ぶ私が感心したのは、古典的な枠組みながら心理描写の深さです。犯人なのか被害者なのか揺らぐ登場人物たちの不信感、絶望感が、時間とともに加速していく緊張感を生み出しています。終盤の仕掛けは、読者の予想を幾度も裏切り、最後には圧倒的な満足感と虚無感をもたらします。 新訳版ということで現代的な読みやすさも備えており、古い作品であることを感じさせません。この一冊で、なぜ世界中で愛され続けるのかが納得できました。仕事の疲れを忘れて一気読みさせるほどの傑作。強くお勧めします。