雄一の本棚
時をかけるゆとり

時をかけるゆとり

朝井 リョウ 文藝春秋 2014年12月4日

感想

直木賞作家による初エッセイ集ということで、期待と若干の不安を抱きながら手に取った。若い作家の試みだからこそ、失敗する可能性もあるだろうと慎重に考えていたのだが、これは想像以上に良かった。 「ゆとり世代」である著者が、自らの世代を対象に、就活や社会人生活の傍らにある何気ない日常を観察する視点は、私たちの世代とは異なる角度から人間というものを見つめている。その観察の鋭さと、それをユーモアを交えて表現する力に、何度も微笑まされた。 特に感心したのは、無駄に見えることの中に価値を見出そうとする姿勢である。キャリアや効率ばかりが重視される現代にあって、「圧倒的に無意味な読書体験」というフレーズに込められた著者のメッセージは、年を重ねた読者にも深く響くものがある。 ただし、全編がエッセイ的軽さで統一されているため、深い思想的示唆を求める向きには物足りなく感じるかもしれない。しかし人生経験の異なる世代を理解したいなら、これは有意義な一冊だ。丁寧に書かれた良質なエッセイ集として、安心して勧められる。