雄一の本棚
悪意

悪意

東野 圭吾 講談社 2001年1月15日

東野圭吾の『悪意』を読み終わりました。以前から高評価の作品として名前を聞いていたので、慎重に手に取った次第です。 本書は一人の人気作家が殺害される事件から始まります。事件の構造自体は割とシンプルですが、真犯人が「なぜ殺したのか」その動機を頑として語らないという設定が秀逸です。この謎を軸に、加賀恭一郎刑事の捜査が進められていきます。 私が54年生きてきた中で感じるのは、人間関係の複雑さは時に事件さえ生み出すということ。本書は人間の内面の暗部、いわゆる「悪意」の正体に迫ろうとしています。犯人の供述調書を中心とした構成も独特で、一見不可解な行動が徐々に意味を帯びていく過程は、知的興奮を与えてくれました。 ただし、結末については賛否が分かれるかもしれません。私自身は最後の真実の提示に若干の物足りなさを感じましたが、それでもなお「人はなぜ人を殺すのか」という根本的な問いに向き合わせられた、良い読書体験でした。東野圭吾の代表作の評判は伊達ではないと思います。